第3章-3-① 市場参加者には、どのような投資家がいるか?

投資家と一口に言っても、個人や一般の事業法人、金融機関などの専門家と立場は様々です。


■機関投資家

生命保険会社や損害保険会社、銀行、投資信託、年金基金など、他人から集めた多額の資金を分散投資する投資家のこと。明確な定義はない。


機関投資家の売買、元をたどればあなたのお金かも!?投資信託や生命保険、年金の運用は、どれも機関投資家です。


機関投資家は保険金や投資信託の信託財産、年金資産など多額の資金をまとめて運用します。そのため、株式市場や債券市場、為替市場に大きな影響を与えることがあります。資金の性格から長期スタンスの投資が多く、株式市場で中長期的な株価形成に影響を与えています。



■自己売買

証券会社自身が一投資家になり、自社の資金で有価証券を取引すること。顧客の注文を取次ぐ「委託」の反対語。


かつては花型だった証券ディーラー。近年は取引所の高速売買システムに対応できない会社の自己売買部門は縮小傾向とか。


個人や法人の投資家が証券会社に株式などの売買注文を出す場合は委託売買(ブローカー)と呼ばれます。証券会社が顧客から取引を委託され、証券取引所などに発注します。

これに対し、証券会社自らが資金の出し手となり、自己の判断で取引を行うのが自己売買(ディーリング)です。金融商品取引法で定められた業務のうちの1つです。

ほとんどの証券会社は、委託売買で顧客から手数料をもらう傍ら自己売買で収益を稼ぐというビジネスモデルになっています。投資部門別売買動向でも自己売買分の取引が公表されます。自己売買のおかげで売買高も増え相場が活性化し安定もしますが、行き過ぎた取引は相場操縦につながるほか、会社の経営にも悪影響を与えます。そのため「自己売買基準」という証券会社への規制があります。



■投資ファンド

投資家から集めた資金を、株式、債券、不良債権、不動産などに投資し、得た収益を投資家に還元するスキーム。


世の中から怖がられることが多いですが、資金や経営ノウハウを注入して事業の成果が出せるようにするのが本来の役割です。


投資ファンドは、公募型の投資信託から特定の投資家対象のプライ ベート・エクイティファンド、商品ファンドや不動産ファンドまで含まれます。投資ファンドが、上場会社の株式を取得して大株主となり、経営陣に経営効率化や株主還元などを提案する例もあります。

投資ファンドは、上場会社への投資だけでなく、株式市場では対応できないタイプの投資対象に資金を提供する重要な役割をも担っています。再生ファンドやベンチャーキャピタルなどです。これらはプライ ベート・エクイティファンドの一種で、会社の成長や再生を支援して株価や債権価値を高めて売却し、利益を得ています。ベンチャーや再建・経営改善への投資が前提なので長期投資となり、投資家は出資後の一定期間換金できないのが通常です。



■外国人投資家

一般に、日本に居住しない投資家を指す。具体的には、海外の年金や投資信託、ヘッジファンドなど。海外投資家とも言う。


東証の売買の約6割を担うのが外国人投資家。それだけ、外国資本から見て魅力的に映る日本経済なのです。


東京証券取引所(東証)が公表している投資部門別売買動向での外国人の定義は、外為法に基づく非居住者を指します。東証における定義の詳細は、下記の図のとおりです。具体的には、欧米など海外の投資信託や年金基金などの機関投資家、ヘッジファンド、買収ファンド、政府系ファンド、そして日本国内の年金でも外国籍ファンドの運用資金は外国人投資家です。

東証発表の投資部門別売買動向では、委託売買の約6割を占める外国人投資家の動向が注目されています。彼らの買い越しが続いたり、多額の買い越し額などの動きが目立てば、株価は上昇と判断されます。反対に売り越しが目立てば、株価は下落と判断されます。



■株式分布状況/投資部門別売買動向

株式所有や株式取引の実態を把握する目的で証券取引所が行っている調査結果。投資家を属性に分けて集計している。


「外国人投資家の売り越し」「個人投資家の買い越し」などの報道は、 このデータを元にしています。東証のWebサイトで見られます。


株式分布状況は、ある時点において、株主の属性別にどのような株主がどのぐらいの株式を持っているかを調べたものです。株主は個人株主、事業法人等、国内機関投資家等、外国法人等、投資信託などに分類されています。年度末などの上場株式について、各所有者が持つ株式が株式数ベースと金額ベースでわかります。また、個人投資家の株主数(延べ人数)や外国人投資家が、どの業種の株式を多く持っているかなどもわかります。

投資部門別売買動向は、東京・名古屋証券取引所(これをまとめて二市場と呼ぶ)に上場している株式を、ある一定期間内に誰がどれだけ買ったか売ったかを集計したものです。投資部門は取引者別に証券会社(自己売買)と委託に大別され、委託はさらに法人、個人、海外投資家、証券会社に分けられます。

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