第5章-2-② 事業資金は、どのように集められるか

株式会社の資本を知るための基本的な用語を学びましょう。


■CB 

発行時に決められた条件で、発行会社の株式と交換できる社債。

交換するまでは、一定の金利を受け取れる社債としての側面も持つ。


CBはバブル期に多く発行されました。

バブル崩壊で額面割れCBが続出。

償還まで持てば高利回りになり個人投資家に大ブーム。


CB (Convertible Bond) の正式名称は、転換社債型新株予約権付社債です。

発行時は債券ですが、投資家の選択により株式と交換(これを 「転換」という)できます。転換の有利・不利は株式市場の状況しだいです。CBの発行会社の株価が転換価格 (転換価額、行使価格ともいう) より高い時、投資家はCBを株式に転換して売却すると差額分の値上がり益 (キャピタル・ゲイン)を得られます。

CBは、株式に転換される可能性を持つので、潜在株式といわれます。CBの市場価格は、ほぼ株価に連動します。債券としての側面と、 株式としての側面を併せ持つ金融商品です。

転換価格は発行時に決められますが、最近では途中で転換価格が変わるCBも出ています。転換時期は、発行日の翌月から償還日の直前に設定されるのが一般的です。



■WB

あらかじめ決められた値段で発行会社の新株を買うことができる権利(ワラント)の付いた社債。


「ワラント債」はバブル期の過去の産物。

現在は、オプション取引として、債券の付いていない新株予約権証券が取引されています。


2002年4月の商法改正により、「ワラント債」の法的な位置づけが従来と変わりました。「ワラント」は一種のコールオプション (オプション取引)で、発行時に決められた権利行使価格で新株を買うことができる 権利の部分だけです。その権利に価値が付いて売買されますが、ワラントは権利行使の期間が終了すると価値はなくなります。権利行使とは、新株を買うことを指します。

ワラントと債券が一緒についているワラント債がWB (Warrant Bond:新株予約権付社債) と呼ばれるもので、従来の非分離型ワラン ト債のことです。CBと違う点は、権利行使をして発行会社の株式を買っても償還までは債券が消滅せず、債券部分の残高が変わらないこ とです。債券部分は普通社債と同じで、通常よりは低いですが金利が付き、額面金額で償還されます。



■ストックオプション

自社株購入権のこと。

株式会社が取締役や従業員などに、あらかじめ決めた株価でその会社の株式を取得できる権利を与える制度。


現在は資金繰りに苦労するベンチャー企業が、優秀な人材を確保すべく、

報酬代わりに「将来上がる見込みの株価」を支払う制度。


ストックオプションは、一種の報酬制度です。

取締役や従業員が自社の株式を取得し、権利行使をする時点での市場の株価 (時価) との差益を、報酬と見立てたものです。

ストックオプションは、まず「あらかじめ定められた株価 (権利行使価額) で自社の株式を取得することができる」という権利を取締役や従業員に与えます。その株価が将来上昇した時に権利行使価額で株式を買い、生じた時価との間の差益を報酬と考えます。その差益は、会社の業績向上いかんで増減するとの考え方から、権利を受け取った取締役や従業員は、株価が上昇するように業績向上への高い意識を持つ、というインセンティブの効果があります。



■エンジェル/ ベンチャー・キャピタル

新製品や新技術を持つ創業期の中小企業に対する投資。

エンジェルは個人投資家、ベンチャー・キャピタルはファンドや法人。


ビジネスの優れたノウハウを持っているが資金がないという若い会社に、資金を提供する人。

見返りは成長した後に期待。


エンジェルとベンチャー・キャピタルは、成長する可能性のある、未公開の会社に投資をする投資家や投資資金を意味します。投資資金を受けた会社が資金を有効活用して事業拡大をし、IPO(新規公開)した後にエンジェルやベンチャー・キャピタルが市場で株式を売却して利益を取るのが一般的です。

エンジェルは資金を出す投資家が個人の場合をいいます。資金の回収時期も特に限定せず、起業家の夢に託すというイメージです。ベン チャー・キャピタルは投資そのものが事業です。投資家から資金を集めて投資家のために運用を行います。運用目標や運用期間を定めて、 投資家の期待する運用益を出すために投資先ベンチャーの経営に関与するなど育成・発展のコンサルティングも手掛けます。



■従業員持株会制度 

従業員が給与天引きを利用し、自分の勤務する会社の株式を積み立て式で買う制度。

1,000円 程度の積立から利用できる。


給与天引きでいつの間にか資産形成......

のはずが業績低迷で年収減、資産も減少ダブルパンチ!

とならぬよう、勤務先偏重も要注意。


従業員持株会制度は、給与天引きによる単元未満株の積み立てです。単元株にまとまれば通常の株式と同様に証券会社を通じて売れます。一般的には、勤務先から「持株会奨励金」という補助金が出ます。 この奨励金でも株式を買います。

なお、会社法の制定や信託法改正がきっかけで「信託型従業員持ち株制度」の導入事例が増えました。 このスキームは、3~5年程度の間、 会社が用意した信託を通じて自社株を買い付ける制度です。制度が導入された当初は「日本版ESOP」と説明されることが多かったのですが、 現在では米国で普及する従業員持株制度 (ESOP) とは制度設計が異なっているとの見解が主流です。



■自社株買い

発行会社自身が、自社株式を買い戻すこと。

買い取った株式を貸借対照表(バランスシート)上で消却する目的で行うことが多い。


自社株買いで市場に出回る株式の需給が引き締まります。

会社の資金を無駄に余らせている場合、有効な使い道として好感されます。


株式市場からその会社自身が株式を時価で買い取ることを、自社株買いといいます。自社株買いを行った自社の株式を貸借対照表上で消却すると、その分の資産 (買付け代金としての現金) とそれに対応する出資資本が減ります。その結果、貸借対照表を圧縮できます。しかし、 これにより会社の財産が減ってしまうため、従来は原則として商法で自社株買いを禁止していました。

1994年に限定的に自社株買いが認められ、その後いくつかの段階を経て、2003年には実質的に自社株買いが解禁、株主総会での定款変更により取締役会で自社株買いの時期や量を決められるようになりました。後に2006年の会社法で規定が整理されました。

自社株買いの資金は、原則的に配当金に回せる剰余金に限られています。剰余金で株式を買い入れると、結果として株価上昇につながるため、自社株買いは重要な株主還元策とみられています。

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