第5章-2-① 事業資金は、どのように集められるか?

株式会社の資本を知るための基本的な用語を学びましょう。


■資金調達

事業のために必要な資金を集めること。

株式の発行、債券の発行、借入れなどの方法がある。


一戸建てが欲しいけど頭金が....。 

銀行ローン、社内融資、親にも援助してもらおうか・・・・・・。

まさにこれが「資金調達」です。


事業に必要な資金を集めることを資金調達といい、株式や債券の発行や借入れなどがあります。資金調達は創業時だけでなく、すでに事業を行っている会社でも、工場の新設や新規事業への参入、企業買収などさらなる事業拡大のために行うことがあります。

株式を発行して投資家に買ってもらい、事業資金を集める方法が「エクイティ・ファイナンス」です。これにはCBの発行など、株式に準ずる性格の証券で調達する方法も含まれます。



■増資

事業資金となる資本を増やすこと。

出資する投資家には新しい株式を発行して交付する。

増資により発行済株式数は増える。


増資した分、株式の数が増えます。

会社の実力が同じなら、1株あたりの株式の価値、つまり株価は下がってしまいます。


会社が投資家から新しい資金を募り、資本を増やすことを増資といいます。増資の目的は、前向きに事業資金を集める場合もありますが、 不況の中で事業再編を進めている時期には、リストラ資金のための増資をするケースも多く見られました。

増資の方法には、株主割当発行増資、公募発行増資、第三者割当発行増資があります。株主割当発行増資では、発行する新株を購入でき るのは既存株主に限られますが、購入は義務ではありません。不況の時代にスポンサーへの増資を求めた例は第三者割当発行増資が多く、 広く一般から投資家の資金を募る場合には公募発行増資が行われます。リストラをするような会社や創業時など知名度が低いときには、事業資金を集めたくても一般の投資家からは集まりにくく、第三者割当発行増資を利用することが多いようです。



■減資

企業が事業資金の元となる資本を減らすこと。

過去から積み上がった赤字を解消するために資本金を取り崩すことが多い。


体重を減らすと、体が軽くなり動きが良くなります。

会社も同じ。 会社の規模を縮小すると、身軽になり効率のよい経営ができます。


税務上の赤字は、翌年の貸借対照表の資産の部に「繰越欠損金」として計上されます。欠損金は、まずは剰余金や法定準備金で穴埋めします。それでも足りないと資本金を減らして同額の欠損金も帳簿からなくし、貸借対照表の総資産と総資本を同じだけ減少させる最終手段に出ます。これが減資の目的です。減資は、発行済株式数を減らす方法と、株数を変えずに資本金だけを減らす方法の2つがあります。

減資は、100%の減資でない限り、株主の利益や権利には直接は影響しません。株価に対しても直接の影響がありません。例えば、50%の減資をする場合は理論的には株価が2倍になるからです。しかし、減資をするほど会社が最悪な状態ということを投資家は否定的に捉え、悪材料となって、その結果、株価が下がることが多いようです。



■公募発行増資 

新しい株式を発行し、広く一般の投資家からその株式の

購入を募る資金調達方法。この手段で発行する株式を一 般に「公募株」という。


公募株は必ず儲かるものではありません。

しかし相場環境の良い時には人気があり、なかなか手に入らず、株価が上昇することも。


公募発行増資 (公募増資) は増資の方法の1つです。公募発行増資は 「公」に「募集」を行うことで、広く一般の投資家に対して株式買付けの募集をします。募集時の株価は、通常の株式市場で流通している時価より5%~2%程度低く設定されるのが一般的です。

公募発行増資で購入した株式で利益が取れるかは、そのときの相場環境と発行する株式数、調達資金の使い道に左右されます。相場環境がよければ株式に対するニーズが高いので公募株式にも人気が集まり株価の上昇につながります。新しく発行する株式数が、すでに発行されている株式数に比べて多い場合、需要と供給のバランスが悪くなります。その結果、株価の下落を招きます。また、調達資金の使い道が積極的な設備投資や研究開発など前向きな用途であれば株価上昇につながり、負債の返済などの後ろ向きの用途なら株価下落の要因となります。



■売出し

それまで大株主などが持っていた株式を、市場で取引をする一般の投資家に対して売却すること。発行済株式数は増えない。


IPOの際には、ベンチャー企業の創業者やベンチャー・キャピタ ルの持株を一般の投資家に売り出すのが通例です。


売出しは公募発行増資と一緒に行われることが多く、「公募・売出し」 として同時に行われるケースがよく見られます。

両者の違いは、新しい株式を発行するか否かです。公募発行増資は前ページの通り、増資の方法です。投資家から新しい資金を集めるために募集をかけ、株式を発行します。一方、売出しは新しい株式を発行しません。すでに発行され大株主が保有している株式を一般の投資家に対して売出します。市場における流動性が高まります。売出しの資金は、前の株主つまり売出した大株主の手元に入ります。

売出しでは発行済株式数が増えません。そのため、売出しがあってもEPS(1株あたり利益) が薄まることはありません。ただし、それまで市場に出回っていなかった大株主の株式が売出しによって流通する株式になることから、それまでの株式市場における需要と供給のバラ ンスを崩す要因にはなります。



■株式分割

株式会社が株式を細分化して発行済株式数を増やすこと。

資本金は増えないが、発行済株式数が増える。


八百屋さんがカブを半分に切って1個の半分の値段で売るように、 

1単元の株式を半分に分割すると理論上の株価は半値になります。


株式分割は、発行済株式数が増えるものの、株式の増加分の資金が増えるわけではありません。資金調達をするために分割するのではありません。存在の株主に、持株数に応じて新しく発行する増加分の株式を無償で分配します。株式の増加に伴い、株価の調整をして株式分 割の前後で株主の持つ時価が同じになるようにします。

株式分割では1株あたりの株価が安くなります。そのため、株式の発行会社が自社の株価水準を高いと感じ、引き下げたいと思う場合に行うことがあります。単元株あたりの投資金額が低くなり、個人投資家の増加が期待できます。また、自社の株式の流動性を高めたい場合に行 うこともあります。発行済株式数が増えるため、株価が安定します。

株式投資がブームになっているタイミングで株式分割が行われると、投資家に株価の上昇要因と判断されることが多いです。しかし、株式分割で流通株式が増えると、需給と供給の関係悪化を招き下落要因にもなりやすいので投資環境には注意が必要です。大幅な株式分割は 需給動向を考えた投資判断が求められます。



■潜在株式

転換社債やワラント、ストックオプションのこと。

転換や権利を行使すれば普通株式となるが、現在はまだ株式ではない証券。


潜在的に株式になる可能性を秘めている株式のことです。


潜在株式とは、もしかしたら株式となるかもしれない、というような「株式を取得できる権利」や「株式に転換できる権利」が付いた証券や契約です。近い将来、株式となる可能性を持ったものなので潜在株式と呼ばれます。具体的には、この後に述べるCB、WB、ストックオプ ションなどが該当します。

潜在株式が実際に株式になると、その株式会社の発行済株式数が増えます。このとき、EPS (1株あたり利益) が減るので、通常はその銘柄の普通株式の株価に悪影響を与えます。このようなことから潜在株式は、その会社の普通株式を持つ株主にとっても「いつか株主の権利が希薄化するかもしれない」というリスクを背負っているといえます。 潜在株式の有無とその数量は重要です。

みんなの株・証券用語辞典

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