第3章-1-① 株式・証券は、どのように取引されているか?

株式の取引方法には、いくつかの種類や特徴があります。


■オークション取引

証券取引所で投資家同士の注文が出会う方式の売買取引。

日本の株式取引のほとんどで採用されている売買の方式。


株式の取引も、物品のオークションと同じ。人々が不要だと思え ば値打ちが低く、欲しいと思う人が多ければ値がつり上がります。


オークション取引は、日本の証券取引所で原則的に採用している株式の売買取引の方法です。証券取引は、多数の売り手と多数の買い手が同時に参加できる競争売買のオークションです。多数の投資家が集まる競争売買では、価格優先、時間優先の原則に基づいて売買が成立します。オークション取引では、市場で売注文と買注文の条件が一致すると売買が成立します。流通株式が少ない場合や注文が売り買いどちらかに偏っている場合では売買が成立しにくく、約定できないこともあります。



■相対取引

売り手や買い手の相手方(ほとんどのケースは証券会社が顧客の相手方)となって売買の条件等を決めて取引を成立させる売買取引。


取引をする当事者間で取引条件を決めて売買をします。買い手や売り手の事情で並はずれた値段になることもあります。


相対取引は、大口の株式取引や債券の一部、また外貨やFXなどの売買で採用されている取引方法です。売り手と買い手が直接に価格や数量などの条件交渉をして売買取引を行います。「相対売買」ともいい、 当事者間の直接交渉なので、市場を通さずに取引します。大量の株式を売却したり買い集めたりする際に、相場に影響を与えずに取引ができる点がメリットです。

一般的には、証券会社などの取引業者が投資家の相手方となって売買を成立させるもので、実際は条件交渉をするというよりも、業者側が提示した条件で取引を行っています。市場を通す取引の場合は、市場に参加する投資家同士が取引する注文を投資家が証券会社に発注し、 証券会社に取り次いでもらっています。



■前場/後場

証券取引所が開いている時間帯のうち、午前中を前場、午後を後場という。


証券マン同士の休日ゴルフ。午前中の9ホールを前場、お昼休憩後の9ホールを後場と呼びます。ウソのような本当の話です。


株式市場をはじめとした証券取引所では、取引が行われている時間帯が決まっています。東京証券取引所 (東証)における現在の現物株取引では、9時から11時30分までの午前中の取引やその時間帯を前場、12時30分から15時までの取引またはその時間帯を後場といいます。 また、取引時間中のことをザラ場といいます。

取引開始時や終了時にも特有の名前があります。1日すなわち前場の取引開始は「寄付」、後場の取引開始は「後場寄り」です。前場の取引が終了することを「前引け」、15時に後場の取引が終了することを「大引け」といいます。また、15時になるより前に取引が終了してしまうことを「ザラ場引け」といいます。



■新興市場

上場基準が緩く、ベンチャー企業などの創業年数が浅く実力がまだ不十分ながら成長性があると見られる株式会社が数多く上場している株式市場。


新興市場の銘柄に投資する以上は覚悟してください。株価が数倍になることもあれば一気に数分の1になることも珍しくありませんよ。


日本の新興市場は、東京証券取引所(東証)の「JASDAQ」と「マザーズ」、名古屋証券取引所の「セントレックス市場」、札幌証券取引所の「アンビシャス市場」、福岡証券取引所の「Q-Board」です。

新興市場は、会社の規模がまだ大きくなく信用力が低くても、成長力があると認められれば上場できます。赤字でも上場できる場合もあり、一般に、若い会社の将来を買うという投資方針で取引されています。しかし、会社の規模が小さいことから発行済株式数が少ない銘柄 が多く、市場で取引される株式の流通量が少ないと株価の乱高下を招く恐れもあることに注意が必要です。



■マーケットメイク

マーケットメイカー(証券会社)が注文の相手方になる取引。ジャスダック市場に上場している一部の銘柄が採用していた。

その名の通り「市場を作る」のがマーケットメイク。取引量の少ない銘柄でも値段をつけてしまうという仕組みです。

マーケットメイクとは、出来高の少ない銘柄でも十分な取引機会を確保できる点が特徴の売買方式です。この方式で売買される銘柄を「マーケットメイク銘柄」、この売買の相手方になる証券会社を「マーケットメイカー」といいます。マーケットメイカーが投資家に売気配と買気配を提示する義務を持ち、投資家は提示された気配値に対する売買注文を出す仕組みです。現在、マーケットメイクは、米国のNASDAQ市場やロンドン証券取引所、東京金融取引所のFXである、くりっく365で採用されています。

海外の金融、証券取引では多く取り入れられている取引方式ですが、日本では過去にJASDAQ市場で一部の銘柄に適用されていたものの、定着しなかったため、現在の株式取引には適用されていません。



■立会外分売

大株主が保有する株式を小口に分けて売り出す際に、投資家から買いの注文を集めて証券取引所の取引外で取引される売買方法。


割安な株価で手数料なしで買え、密かな人気の立会外分売。ただし申し込みが分売前日の夕方から。短時間での判断です。


大量の売注文は市場の需要と供給のバランスを崩し、株価の値下がりを招きます。そのため、大株主の株式は、市場を通さずに売却されるのがほとんどです。それが「立会(市場)」の「外」で小口に「売」り「分」ける方法の立会外分売です。

具体的には、証券会社が大株主から大量の売注文を受けることにな ると、証券取引所に届出をし、市場の取引終了後に分売の条件を発表 します。分売される株式を買う一般の投資家は、翌日の寄付より数十分ほど早い、証券会社ごとに決められた時刻までに買付けの申し込みをします。一般に分売される株式の株価は届出日の終値を基に3~5%程度安く、手数料も不要です。

立会外分売は、単に大株主の保有株を売るためだけではなく、上場会社の株式分布が大口株主に偏らないよう、個人株主を増やすための方策としても利用されています。最近では、インターネット証券会社が、投資家に向けて夕刻以後のメールで立会外分売の告知をするケー スが多く、以前に比べて個人投資家の間に広まってきました。

みんなの株・証券用語辞典

『みんなの株・証券用語辞典』では、投資の基礎を理解するために不可欠な用語を選びぬき、できるだけわかりやすく説明しました。皆様が難解な金融や経済の専門用語と株式市場特有の業界用語につまづいた時に、本サイトが手ほどきになれば幸いです。