第2章-3 株式・証券は、どのように売買されるのか?

売買された株式や証券が安全に保管される仕組みや名義の登録に関して解説します。


■保護預り

重箱い顧客が有価証券などを自分で保管せずに、証券会社や金融機関に預け入れる仕組み。

分別保管されている。


現在、保護預り制度が適用されているのは、ベンチャー企業に代表される未上場株式など、一部の証券に限られています。


以前、紙の証券があった頃は、株式や債券、投資信託の受益証券は、 通常は保護預り契約を結んで保管されていました。株券の電子化後は、すべての上場株式がコンピュータの帳簿上で管理されています。 現在は紙の株券がないのですから、保護預り制度は事実上、終了して います。

投資家の株式は、証券会社を通じて証券保管振替機構「ほふり」に再寄託され、証券保管振替制度の管理下にあります。




■名義

購入した株券がその株主のものであると登録された名前のこと。

氏名のほかに住所、電話番号、印鑑を登録する。


「ほふり」に預託した株券の株主名簿上の名義人は「ほふり」です 。

投資家は「実質株主」として実質株主名簿に記載されます。


株式は、投資家がお金を出して買っただけでは株主になったとはいえません。配当金や株主優待、株式分割を受けるためには買った株式 を自分の名義にする必要があります。

株券の電子化以前は、名義書換の方法が2つありました。1つ目は、 株式の発行会社が指定した株主名簿管理人に、株券と一緒に所定の名義書換請求書や印鑑票を提出する方法です。2つ目は、証券保管振替制度を利用する方法です。名義書換をせずに「実質株主」となって発行 会社に通知され、株主と同様の権利が得られます。

2009年1月に実施された株券の電子化で前者の名義書換は廃止、証券保管振替制度に株式情報が集められ、「株主通知」が株式の発行会社に送られる後者の方法に変わりました。



■証券保管振替制度

株券、債券、投資信託の受益証券を証券保管振替機構に集めて、一括して管理する制度。

株券での利用は、その都度の名義書換手続きが不要になる。


「ほふり」の制度施行前は、紙の株券を自分で保管する投資家もいました。

当時は、株券の紛失や盗難も珍しくありませんでした。


証券保管振替制度は、株式、債券、投資信託の受益証券などの証券を「証券保管振替機構 (愛称・ほふり)」に集めて一括管理し、売買の決済や株主の権利の移転を口座の振替によって行う制度です。

証券保管振替制度の主なメリットとして、売買の際に株券の受渡しが不要で証券取引に係る手間や時間が短縮される、会社の合併等の上場会社の企業再編において株券を発行会社に提出する手続等が不要になる、等が挙げられます。

なお、株券を発行せず、株主の管理を株主名簿で一元化する株券の電子化後は、旧来の名義書換手続きに代えて証券保管振替制度が株主の名簿管理の中心となりました。



■分別保管

金融商品取引法で証券会社に義務付けられた、「何が誰の資産なのか」がはっきりわかるように保管すること。


銀行預金は、顧客の預金が銀行の資金になっているのでペイオフ制度が必要。

証券類は、顧客と証券会社の資産が別勘定なのです。


金融商品取引法では、証券会社自身が保有する有価証券やお金などの資産と、顧客から預かった顧客の資産を分けて保管するように証券会社に義務付けており、これを分別保管といいます。顧客から預かった現金も「顧客分別金」として、分別保管されています。証券会社がきちんと分別保管をしていれば、万が一証券会社が経営破たんに陥ったとしても、顧客の有価証券やお金は顧客の元に確実に返還されます。

なお、信用取引、オプション取引などの未決済建玉に係る評価益などは、分別保管の対象ではありません。



■移管

現在、保管振替制度を利用して証券会社に預けている株式を、書類上の手続きだけで別の証券会社に預け替えること。


取引証券会社と相性が悪く、「イカン」と思うことがあれば移管も選択肢。

資産を売却せずに証券のまま引越しできます。


証券保管振替制度を利用して証券会社に預けてある株式は、取引証券会社を変更したい場合に、依頼書を提出するだけで株式の預け替えができます。それが移管という方法です。何らかの理由で取引証券会社を変えたい場合の手続き方法として知っておくとよいでしょう。

手続き方法は、顧客が「口座振替依頼書」または「特定口座内保管上 場株式等移管依頼書」に記入し、それまで株式を預けていた証券会社に提出します。このとき、新しく利用する証券会社の部支店名や口座番号を記入するので、先に移管先の証券会社で口座開設と証券保管振替制度の手続きをしておきます。通常、移管をする際には、特定口座から特定口座、または一般口座から一般口座への移管のみしか取り扱わないケースが多いので注意が必要です。



■信託銀行

普通銀行の業務と、貸付信託や金銭信託など信託財産を管理・ 運用する信託業務の両方を営む銀行。


財産管理を強みとする信託銀行は、遺言信託、相続コンサルティング、事業承継、相続財産管理などの業務に力を入れる傾向です。


信託銀行とは、信託業務を取り扱う長期金融機関です。 信託業務は、お金、株式、土地などの資産を預かり、本人に代わって資産を運用・管理します。信託法では、信託業務で受託する信託財産と、銀行が保有する固有財産の「分別管理」を義務付け、信託銀行の財務は信託勘定と銀行勘定の2つに分けられています。

信託銀行は株主名簿の管理や配当金の支払事務などの証券代行サー ビス業務を担います。株式の株主名簿管理人として株主名簿管理を業務とします。株券の電子化までに証券保管振替機構に預託されなかった上場株式の管理も信託銀行が行っています。

なお、2004年に改正信託業法が施行され、一般事業者も信託業務に参入できるようになりました。



■株券の電子化

上場会社の株式等について株券発行せず、株主の管理を株主名簿上で一元化している振替制度。2009年1 月5日より実施。


証券の電子化により、1人の投資家が複数の証券会社で取引をしていても、証券保管振替機構のデータで一元管理されています。


「社債、株式等の振替に関する法律」の規定で、現在は株券の電子化が実施されています。上場会社の株式の券面がなくなり、コンピュー タの帳簿で管理されています。一斉かつ強制的に「株券不発行」に移行しました。その後の株券は意味をなさなくなり、株券自体に価値はなくなりましたが、株式を所有している事実がなくなっているわけではありません。

株券が紙の証書だった時代には、名義書換手続をすると株主名簿に 氏名や住所が記載され、株券にも株主名が記されていました。株券の電子化制度に移行した後、株主の権利は、証券保管振替制度および証券会社の口座を通じて電子的に管理されています。新しい振替制度の 振替口座簿に氏名、住所等を記載されることで確認できます。

みんなの株・証券用語辞典

『みんなの株・証券用語辞典』では、投資の基礎を理解するために不可欠な用語を選びぬき、できるだけわかりやすく説明しました。皆様が難解な金融や経済の専門用語と株式市場特有の業界用語につまづいた時に、本サイトが手ほどきになれば幸いです。