第1章‐2.株主の権利とは?

株主になると、経営参加権や利益配当請求権など、いくつかの権利を得ることができます。


■株主 

株式会社の事業のために資金を出している出資者のこと。


株式の売買は、株主が別の投資家に株式を妥当な価格で譲り渡すことです。

株式を買った投資家が、次の株主になります。


株式会社は、複数の出資者による資金を元手にして事業を行ってい ます。その出資者が株主で、資金を出資した証拠が株式です。株式は 従来、紙でできた券面でしたが、2009年1月の株券の電子化以降は電 子名簿上で出資した証拠を示しています。出資または市場で株式を買 付け後、証券保管振替機構(ほふり)への登録をすると実質株主になり ます。この手続きを経てはじめて、株主総会の召集通知や配当金の支払通知が送付されます。

株主は、株式会社に対し、出資した比率に応じたオーナーです。出資した会社を小口に切り分けた株式を発行し、大勢の株主が共同で株式会社を所有しているのです。



■株主の権利

株主の権利株式を購入し、保有する株主が、事業資金を提供している見返りとして発行体から得られるいくつかの権利のこと。


資金を出したからには事業がうまくいってほしい。

そのために株主総会で経営をチェックします。利益の一部も配分されます


株主になると、その株式会社に対して出資した範囲内での責任を持つと同時に、いくつかの権利を持ちます。

「経営参加権」は、経営に関する重要な事項の決定権を持つものです。 持っている株式数が多いほど株主総会での発言力があり、資金面で経営に参加していると言えます。「利益配当請求権」は、出資した株式会社が事業で生んだ利益の一部を配当金として受け取れる権利です。

もしも投資した株式会社が解散することになった場合、その会社が負債を返した後に残った財産は出資者である株主に分けられます。この権利が「残余財産分配請求権」です。



■配当金

株式会社が稼いだ利益の一部を出資者である株主に還元する現金。

正式には株主配当金という。1株あたりの金額で示される。


利益のうち、どれだけ多くを配当金に回してくれるかは、株主にとって大問題。

増配報道で株価が上がる理由は、まさにそこです。


株式を発行した株式会社は、事業活動で生み出した利益を将来のために会社に残すほか、株主にも分配します。証券保管振替制度で実質株主となれば、持株数に応じた配当金を受け取れます。一般的に配当は発行済株式数で割り、「1株あたり配当金」として表します。

配当金は投資した会社の業績の良し悪しで増減します。配当しないことは「無配」、前年の無配から配当が復活すると「復配」、前年より配 当金が増えると「増配」、減ると「減配」です。また配当金は日割り計算をせず、計算期間分の配当金を受け取れます。

2006年5月施行の会社法では、定款変更を行った上で会社の利益処分を取締役会で決められるようになりました。従来は配当金に関しては株主総会の決議でした。年に何度も招集通知を発送して株主総会を開くのは現実的ではなく、中間配当と期末配当、または期末配当だけ でした。取締役会の決議になり、四半期配当も実現可能となりました。



■株主優待

株式会社が一定の株数以上を持つ株主に対して、自社製品やサービス、チケットなどの贈り物をする制度。


消費者として利用する会社の株主優待内容は、要チェック。

優待の良し悪しで投資銘柄を決めている優待マニアの投資家もいます。


株主優待は、株式会社に特に義務付けられたものではなく、任意の制度です。我が社のことをもっとよく知ってもらいたい、株主に喜んでもらいたい、という会社が実施しています。権利確定日に一定の株数以上を持つ実質株主であれば受けられます。

株主優待の内容はバラエティに富み、個人株主の広がりにも一役買っています。自社製品を優待製品にできる食品メーカーや、金券・割 引券を提供できる小売業では積極的に導入している一方で、自社製品 を消費者が直接利用できない素材・中間生産財メーカーなどの業種で は、商品券やプリペイドカードなどで対応しています。

しかし、直近では、業績悪化によるコスト削減や、金券や自社製品よりも配当金で株主に還元すべき、という考え方の台頭で、株主優待制度を見直す会社も出てきています。



■株式還元

株式会社が事業活動の利益を株主に適切に還元すること。

株主配当金、株主優待制度、株式分割や、自社株買いなど。


「事業資金を出してくれる株主様へ。おかげで事業は順調です。資金提供のお礼に配当や自社株買いでお返しします」ということです。


株式会社は株主の出資があってこそ事業活動が行えます。資金を出してくれた株主に対するお礼が株主還元です。

株主還元にはいくつかの方法があります。配当金は、その年度の事業活動で得た利益の一部をお金で株主に還します。株主優待制度では、自社製品や商品券などを株主に贈り感謝の気持ちを表します。株式分割は発行済株式数を増やして既存株主に株式を分配します。1株主の保有する全体の資産価値が変わらずに保有株数が増えます。自社株買いも株主還元策の1つです。買い取った自社株を消却して資本を縮小すれば、利益水準が同じだったとしても一株当たり利益が高まります。株価上昇を誘発し、株主の資産価値が上昇します。



■株主代表訴訟

不正行為など会社に対して損害をもたらした取締役や監査役などの役員に対して、株主が会社に代わって損害賠償の訴訟を起こすこと。


株式会社の役員が「なあなあ」にならないように歯止めをかける効果があります。

株主による役員のチェック機能です。


株主代表訴訟(代位訴訟) は、株式を6ヵ月以上持っている株主なら誰でも行うことができる、責任追及等の訴えです。

株主から委任されて会社を経営する取締役は、会社に対し責任を負っています。取締役が不正行為や会社に不利益を与えると、本来は、会社が取締役の責任追及をします。この時、会社が責任追及を怠った場合に、株主が会社に代わって、その取締役に損害賠償の請求をする 訴訟が株主代表訴訟です。株主は、あくまでも会社の代理であり、損害賠償金を株主に支払えと請求するものではありません。会社に対して賠償金を支払うように訴えるのです。

民法による損害賠償制度の消滅時効が10年のため、会社が損害を被ってから10年間は訴訟ができます。

株主が勝つと、取締役は会社に与えた損害を個人で会社に賠償しなければなりません。株主は会社に訴訟費用を請求できますが、賠償金は受け取れません。株主が敗訴した場合、訴訟費用は株主の負担です。



■大株主

株式会社の株主のうち、持株比率の高い株主のこと。

持株比率が最も高い大株主は、筆頭株主と呼ばれる。


その株式会社にたくさんお金を出している投資家が大株主です。

 多数決となる株主総会では、大株主の意見が議決を左右します。


一般に、その株式会社の発行済株式数のうち、多くの株式を持つ株主を大株主といいます。何%以上の持株比率だと大株主、というボー ダーラインは特にありません。有価証券報告書から転載される会社四季報や会社情報には、持株比率の高い筆頭株主から順に数えた上位10 者までの株主名が大株主として掲載されています。

株式会社組織では、持株数に応じて株主の権利を持つため、大株主の発言などが注目されます。また、大株主がその株式をさらに取得して持株比率を引き上げると、将来的に経営権を取るのかと市場の話題に上ることもあります。逆に、大株主がその株式を売却すると、市場の需要と供給のバランス悪化につながるため、注目される場合もあります。 このように、大株主の動向が株価に影響することもあります。

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