第5章-1-② 株式会社は、どのような仕組みになっているか?

株式を買うことは、株式会社に出資をすること。

株式会社の仕組みや事業に関する用語をおさえておきましょう。


■監査役

株式会社のお目付け役として、株主の利益のため取締役や会計参与の職務執行を監査する職責を負う。株主総会で選任される。


繰り返し起こる企業の不祥事。

不祥事防止や早期発見のために、 監査役には毅然と職務を遂行してもらいたいところです。


監査役は、会計や業務に関する法令や規制、社内規定などのルールをその株式会社が守っているかを第三者としてチェックし、是正すべき点があれば指摘をする業務を担います。会社法では、取締役会を置く会社には監査役が必要と定めています。委員会設置会社 (改正会社法 施行後は「指名委員会等設置会社」)には監査委員会があり、監査役を置くことはできません。監査役の選任・解任は株主総会で決議します。

監査の方針や調査方法などを決めて監査報告をする監査役会は、監査役全員で組織されます。監査役会を置く会社は監査役が3名以上必要で、その半数以上は社外監査役でなければなりません。

2014年6月に可決・成立した改正会社法では、監査役、監査役会が設置されない代わりに3名以上 (過半数は社外取締役)の監査等委員である取締役によって構成される「監査役等委員会設置会社」が、選択肢 の1つとして創設されます。



■会計監査人

会社の計算書類の監査をする公認会計士または監査法人などの専門家のこと。

大会社では設置が義務付けられている。


株式会社の帳簿を、会計の専門家の目線でチェックします。

監査役に比べると、こちらは厳しい目を持ったプロフェッショナルです。


大会社では、監査役による監査のほかに、計算書類について公認会計士や監査法人などの専門家の監査を受けなければなりません。会計監査人は、会社の帳簿や資料をいつでも閲覧でき、その会社の取締役や従業員、子会社に対して会計に関する報告を求めるなど、会計監査 に関する権限が与えられています。会計監査人は、監査役会の同意を得て、株主総会で選任されます。2014年6月に可決・成立した改正会社法では、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任等に関する議案は、監査役(監査役会)が決定することに改められます。

会社の内部統制が重要視されるに従い、監査役、会計監査人の役割も重要になっています。会社法では、大会社では会計監査人の設置が強制されました。大会社には3人以上の監査役を置かなければならず、 うち半数以上は社外監査役を置くことや会計監査人の強制をするな ど、コーポレートガバナンス(企業統治) の仕組みが強化されています。



■委員会設置会社

大会社などが設置できる、業務の執行と監督を分離した米国型の企業統治形態の株式会社。

従来からの株式会社における監査役制度に代わる形態。


委員会設置会社の目的は、経営を監督する取締役と、

業務を執行する執行役に役割を分けるため。経営の透明性を高めます。 


2003年4月施行の商法特例法改正で、「委員会等設置会社」という名称で導入が認められ、2006年5月施行の会社法で、名称が委員会設置会社に改められました。さらに、2014年6月に可決・成立した改正会社法施行後は、「指名委員会等設置会社」に名称が変更になります。これは、改正法で「監査等委員会設置会社」という別の統治形態が創設され、それと区別するためです。委員会設置会社を採用した会社では、経営にあたる執行役を置き、担当分野の業務に専念させます。経営方針を策定するのは取締役会で、監査役は置きません。3つの委員会を置き、 そのうちの1つである「監査委員会」が監査を行います。その他、取締役の解任・選任の議案を策定する「指名委員会」、取締役や執行役の報酬を決める「報酬委員会」を設置します。各委員会は、それぞれ取締役 3名以上(うち過半数は社外取締役)で構成されます。



■CFO/COO

主に米国の会社で定着している、経営組織における名称。

CEOは最高経営責任者、COOは最高執行責任者。


従来の日本の会社組織では、経営者は創業者やオーナーがほとんど。

米国型の経営者は、株主の代理人である取締役会で選ばれます。


米国型コーポレートガバナンスでは、会社の所有と経営がはっきり分かれています。取締役会は日本と異なり株主を代表する機関です。 CEO (最高経営責任者) は、経営の意思決定と経営を監視し、会社全体の経営方針を決める最高権力者です。取締役会で、任命されます。 COO (最高執行責任者) は会社運営の実務担当です。CEO が定めた経営の方針や戦略に従って、実務を担います。CEOが戦略を立てて、 COOが実行するという役割に分担され、責任の所在が明確です。

日本の委員会設置会社は、米国型経営に近い制度です。しかし日本の会社法では、代表権を持つのは取締役または代表取締役、委員会設置会社では代表執行役です。CEOやCOOは経営責任の所在を明確にするためにの呼称で、法的な役割ではありません。



■(株主総会における) 委任状

株主総会に出席できない株主は、代理人による議決権の行使が認められており、

委任状は代理権を証明する書面のこと。


株主総会での決議を成立させる目的で、会社が株主に対し、

第三者に議決権の代理行使をさせるよう勧誘することもあります。


会社法では、株主が株主総会に出席できない場合に、代理人による議事の賛否を表明することを認めています。そのために必要な書類が委任状で、株主または代理人が会社に提出します。ただし、会社によっては株主総会の代理人になれる資格の規定や定款で代理人を株主に限定するなど、誰でも代理人になれるわけではない場合もあります。

株主総会の委任状は、本来、総会当日に都合の悪い株主が、代理の人に出席してもらうための書類です。しかし最近では、ある株主が会社提案の否決や自己の提出した株主議案の賛同を求めて委任状を集める委任状争奪戦が多く見られます。これを「プロクシーファイト」と言い、敵対的買収などで経営陣と買収者側が委任状を取り合うことです。

みんなの株・証券用語辞典

『みんなの株・証券用語辞典』では、投資の基礎を理解するために不可欠な用語を選びぬき、できるだけわかりやすく説明しました。皆様が難解な金融や経済の専門用語と株式市場特有の業界用語につまづいた時に、本サイトが手ほどきになれば幸いです。